本当に望んでいるのは

2010年の話だから、もう5年も前のことになりますか。

マルチメトリックという名前の牝馬を一口持っていたんです。とにかく前の捌きが堅い馬でね。競走生活の中で骨折が2度。そういう馬だから骨折しやすかったのか、骨折を繰り返すうちにそうなってしまったのか。恐らくそのどちらともだったと思うんですけど。
そんな彼女が、ケガの後の長いスランプからようやく立ち直って、3連続2着。今度こそは!と手の合った大庭騎手からローカルの主であった中舘に乗り替わり、必勝を期して臨んだ一戦。スタートから押して勝ちに行った彼女は、しかしながら、1コーナーを迎えることすらありませんでした。

捌きの堅い彼女の脚が、まだ身体の温まりきっていないスタート直後からのストレスに耐え切れなかったんですね。

中舘を責めちゃいけないことはわかっていたんですよ。彼はそういう騎乗をして自身の地位を築いたわけだし、それをわかっていてオーダーしているのだから、求められた乗り方もそういうものだったはずなんですよ。でも、責めずにはいられませんでしたね。人前には出さなくても、「何でそんな乗り方するんだよ」「彼女に一番してはいけない乗り方じゃないか」「そんなことしなくても勝てただろ」って、心の中で、ね。

実際のところ、押してポジションを取りに行かなくても勝てたかどうかはわかりません。そりゃそうだ。わかるはずはないもの。でも間違いなく言えたことは、無事に帰ってきてくれてさえいればまだまだ勝てるチャンスはいくらでもあった、ということ。チャンスはその時にモノにしておかなければ普通はなくなってしまうけれど、あの時の牝馬限定の500万下はとにかくレベルが低かったから…。
そりゃ勝ちたいよ。でも勝ちに行くことで何かを失わなければならないのなら、負けても無事に帰ってきてくれる方が断然いい。それはダービーでもジャパンカップでも有馬記念でも条件戦でも一緒。勝利が第一ではない。望むのは、個々の馬の状況や抱えているモノや事に合わせて、その中で最大限力を発揮させてくれること。それ以上でもそれ以下でもない。最近、改めてよくそんなことを考えます。


中舘、騎手引退ですか。それもあって、あの時のことを改めて思い出した次第です。
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