理想と現実 フットボールと人生

レアル・マドリー-バルセロナ“エル・クラシコ”とバルセロナ-チェルシーのCL準決勝2戦の合わせて3戦を立て続けに見て感じたことがあったので、今日はそれを書きたいと思います。


一方的な試合となったクラシコ後、カシージャスがこうコメントしてた。
「我々の上をローラーが潰していった」

巧いこと言うよね。要するに、全否定されたってこと。マドリーの何かが悪かったわけではないのに、バルセロナの美しくて楽しくて強いフットボールがその存在を無にしたんだ。

美しくて、楽しくて、強い
フットボールの理想形を地でいくバルセロナ。誰もが幸せになる攻撃的でスペクタクルなフットボールの勝利は、まるで「正義は勝つ」と言っているようでもある。

あのさ、よく正論ばっか叫んで強がってるヤツっているじゃん。彼らが何でそんなことをするかと言えば、正論や正義ってすごく強いものだから、そうするんだよね。何よりもピュアで、だからこそ尊くて、強い。すべてを超越した、誰しもが憧れる崇高な存在だから。

その強大な力を前にしたとき、普通やちょっといいぐらいでは無力も同然。それがクラシコでのマドリーであり、今シーズン、バルサに撥ね返された各チームだったんじゃないかな。そのときの虚無感たるや、いかばかりか。察するに余りある。少々残酷なほどに。

しかしながら、その強大な力が大きく揺るがされた。それがチェルシーとの2戦だった。

しかも、そのアプローチが非常に興味深い。第1戦は徹底した現実的戦法、いわゆる、とにかく引いて守って、カウンター。国語という教科では理想と現実は対義語として扱われるけど、“アンチ・フットボール”とさえ言われたほど、全く対極的な戦法を前にバルセロナは大苦戦…。

チェルシーの監督であるあのタヌキオヤジは、決してそういう戦術を好む監督ではないんだけどね。むしろバルセロナのような攻撃的戦術が大好きで、02年W杯での韓国代表や去年のユーロのロシア代表を見れば、そのことはよくわかる。だからこそ、というべきか、あのオッサンはあの芸術的なサッカーを止める術を知っていたのかもしれない。そしてそれは、第2戦を迎えてより明確な形で明らかになる。そう、チェルシーのホーム=スタンフォード・ブリッジでバルセロナが直面したのは、さらにえげつない圧倒的な“現実”だった。

甘い誘惑に、数々の罠。「入っておいで…」と誘っておいて、入ってきたところに襲いをかける。

つまらない現実を全否定するのが夢のような理想形ならば、そんな理想には圧倒的なリアルを―。その戦術はまるで人生を表しているように思えた。「オイシイ話には裏がある」というが、理想を掲げた夢追い人たちが数々のトラップを前にたじろぐ姿は、まさに人々が生きていく中でその厳しさや汚くて醜い部分に直面している姿そのもののようだった。

“キレイゴトだけでは生きてはゆけない”

実際に、多くの人たちがそうしてしまうように、夢追い人たちもまた、完全に心が折れかけた時間帯はあった。それでも最後まで諦めずに戦った彼らを、イニエスタの“ゴラッソ”と、2度のハンドの見逃しが救う―。

ユニフォームを脱ぎ捨て、拳を突き上げるイニエスタ。あんなに感情を爆発させる彼を、これまで見たことはない。それだけでも衝撃的で、エキサイティングで、心を揺さぶられた。そして正義のフットボールは、厳しい現実を超えたんだ。

だけど、そのとき、強大な理想を前に、あらゆる策を用いて立ち向かいながら撥ね返された“現実”たちはどうなる?しかも、何かあるべきではない外的要因=誤審がそこに加えられているとしたら…。

打ちのめされるよね?受け入れたくないよね?信じたくないよね?
何それ?って。そんなのアリ?って。こんなに頑張ってるのに無にされなきゃならないんだって。

オレはバルセロナの正義のフットボールは好きだよ。だけど、ちっちゃな1人の人間である自分は、バルセロナを前にしたチェルシーのような存在でしかないんだよね。だからなのか、バルセロナの勝利という結果を知って観戦しつつ、時間が経過するほどチェルシーに感情移入してた。

試合が終わったときは、言葉がなかったなぁ。ただただ、茫然としてた。
そして、気づいたら、涙が流れてた。

ビデオを見てから1日経つけど、どっちの理由で―理想が厳しい現実を突き抜けた喜びなのか、そこにあるリアルが夢のような存在に返り討ちに遭った悲しみや無力感なのか―涙したのかわからない。だけど、プライドを棄て、ただ勝利のために戦った一丸となってチェルシーには、本気で感動した。


「理想形こそが大いなる力」であるとされてしまったら、我々は生きてはゆけないだろう。だけど、理想を掲げ、夢を追い続けることがさらなる高みへと導いてくれる。そして、すべてを出し尽くして戦うことも大いなる正義なのだと、改めて感じた。そんな人生を縮図のサッカーに大きく心を揺さぶられた、2戦であり、3戦だった。




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