ヴィクトリアマイルでウオッカに望むこと

桜花賞以後のウオッカは、常に非常識の中にいた。

ダービーから始まったウオッカの挑戦。その道は波乱に満ちていた。栄光と挫折、期待と落胆が繰り返される日々。その狭間で人々は突き動かされ、そのたびに心の中に彼女の存在を残していった。そして陣営のかつてない挑戦を続ける姿勢は多く支持され、共感を得ていた。彼女と彼女の陣営がくれた未知なる世界への夢は、その先もずっと続いていくはずだった。

旗色が変わり始めたのは、有馬記念が終わった頃だったか。

思うほどに応えてくれないウオッカから、人々は期待の対象をダイワスカーレットに移し始めたのかもしれない。ダイワスカーレットのフェブラリーS出走とドバイWC挑戦の話が浮かび上がったちょうどその頃、一方で「ウオッカをこれ以上傷つけてくれるな」「ダービー以降は1勝もできていない」という声がちらほら聞こえるようになった。そしてそれは京都記念の敗戦で決定的なものとなる。
やがて迎えたドバイデューティフリーでは、世界一決定戦とも言える好メンバーを相手に好パフォーマンスを見せたにもかかわらず、ついぞ彼女らを賞賛する言葉が発せられることはなかった。あの時抱いたまだ見ぬ扉の向こうへの期待も、挑戦し続けることへの敬意も、すべて忘れ去られてしまったかのように。

この1年間、ウオッカは常識的な牝馬のローテーションに捕らわれることなく、より大きな栄誉を目指し、誰よりも強い相手と走ってきた。そして歴史的な栄光を手にしたとしても決してその場に留まったり後戻りすることなく、さらなる高みへと挑み続けていた。だからこそ、その存在は他の誰よりも気高く、その足跡はどんな勝利よりもはるかに偉大なものであるはずだ。

5月18日、ウオッカはダイワスカーレットもアストンマーチャンもいない牝馬限定レースを走る。

後々に振り返ったとき、このレースを走ったことがウオッカに何をもたらしたのかは、今はまだわからない。だけど、もし叶うならば、「普通の牝馬限定戦など易いもんなんだ」という圧倒的なレースが見たい。「ここはもう2度と走る価値のない場所なんだ」ということを見せつけた上で、またウオッカの道を歩み続けていく一歩目となってほしい。そして、復帰後は決して道を外すことはしないであろうダイワスカーレットが、どんなに手を伸ばしても届かないところへと行ってしまえばいい。



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